ゴルフの面白さだけでなく、その効用もやってみないとわからない。おそらく、効用が肉体的なことだけではなく精神的な面が多いからだろう。
私のクラブには、最高年長96歳の会員がおられる。80歳台は、まだまだ、現役である。4人組の合計が、360(92、91、89、88)というので、スコアと思ったら、年齢だったということもある。勿論、ギネス・ブックに入れる数字である。
こうした先輩方と、時折、ゆったりお話を伺う機会もある。元気な方たちだから、女性の話になったりして、男も女も、灰になるまで大丈夫だといった情報を頂くことになる。
ゴルフの目的などとくだらぬ質問をしてみる。健康のためとか、社交のためとかいった答えは、一切返って来ない。
「そりゃ、面白いからですよ。下手じゃつまらないから、いろいろ工夫もするしね。」
その工夫というのは、ゴルフコース以外でのエクササイズなのである。重いクラブをふったり、足首に鉛粒の入ったベルトをつけて普段、歩いていたりという工夫である。
さすがに、明治生まれの進取の気性は、失っていない。ゴルフは、馬の鼻先にぶらさげたニンジンである。そのニンジンを食うために、節煙、節酒といったことになって、数十年を経過することになる。
都会の人間にとってゴルフは長寿のための唯一の手段になっているのである。
ところが、こうした効用は、説明してもピンと来ない。歩くだけなら、町中でもよいと思えるし、球を打つだけなら、トリカゴの中でひっぱたいていればよいということになる。もう他界なさったが、ある有名な新聞人の場合は、2人とも、ゴルフクラブの理事寅と役員をされていた。亡くなるまでの30年近くゴルフを愛し、溺愛し、楽しまれた。
この2人が、ゴルフ亡国論者だったのだから驚きである。
その筆先の鋭さは、ゴルフに対する憎悪を思わせるものがあった。ミイラとりが、ミイラになったのか、お2人とも、ゴルフに魅せられると、亡国のボの字も忘れ、残念ながら、何故、そのような筆陣を構えたかの説明もなかった。学生時代、私は、随分、節操のない人だと思ったりしたものである。
さて、詰を元に戻そう。わが国に於ける反ゴルフは、無責任なマスコミで、拍車をかけて来た。税金は、料罰の意味もあるから、ゴルフ税をみるとあきれ返る。
大正12年ゴルフ用具に対する奢侈税が話題となったが、撤廃運動が成功。
昭和4年 福岡県、会員に年20円課税。
昭和8年 静岡県、川奈に対し課税決定。大倉侯の強力な抗議で断念。
昭和14年 入場料10%
昭和15年20%、17年50%、19年150%で終戦。
戦後はゴルフ用具物品税3割、利用税100円から始まり1,500円まであがる。
大正、昭和と戦前は右翼にアジられ、反ゴルフ運動が強まり、現在は、感情的な反対論が、環境問題と同調して来ている。15世紀スコットランド以来、ゴルフが盛んになると、反対も強くなる。
日本の場合、ゴルフに対する反感の根拠は「ゴルフが外来、しかも、英米のゲームである上に、広大な土地を使い、一部特権階級のぜいたくな遊戯である。」という考え方が、常に中心になっている。戦争の時は、“戦時”が、錦の御旗になり、今は“農薬公害、自然破壊”が、御旗に代わっているだけのことである。
農薬については、宇都宮大学の竹村哲夫名誉教授によれば「ゴルフ場での農薬による被害が起こったら、知らせて欲しい。この30年間、農薬の発達は著しく、安全性は、遥かに高く、被害の起こる可一能性がないからである。
発ガン性や催崎性は、皆無であり、実例があったら、知りたいのである。」といわれる。厚生省、農林水産省による許可は、きびしい検査機関の研究が終わってから出ているものである。農薬は、日進月歩で、より効果的でありながら、安全性の高いものが、次々に研究開発されている。農薬が猛毒であると思いこんでいる学者は、こうした農薬の進歩の歴史を知らず、一人よがりの過去の記憶を頼りに、現在を断罪してるのである。
こうした農薬学会に緑のない学者(新情報は、多量であり、会員でないと追いつけない。)は、会員でもなく、情報も限られている。普通の神経なら何も発表できぬ筈だが、この人たちが軽薄なマスコミに売りこみ、世間の人々を挑発する。
しかし、どの記事を読んでも、実証的なデータはない。単なる推測であったり、実験方法を明示しない、根拠の薄い例である。
人類は西暦1700年までは僅か5億人に過ぎなかった。それが100年後の1800年末には2倍の10億人に増えた。そして1990年はじめに52億人となった。現在1日に20数万人が生れ、一年間に1億人が増加している。予測によれば西暦2000年、(後3年)には60億になり、その10年後の2010年には70億を超えるという。かくして人類100億時代は目前に迫っている。この人口をささえる為にも、安全で効果の高い農薬開発が必要不可欠である。
現在、わが国の農薬使用量は、3,596億円(1988年調べ)。
この内、農業が、全体の90%、ゴルフ場関係は、2%である。もし、農薬が、それほど危険なら、日本農業は、完全に破壊している。日本に住んでいる人間は、殆が不具者になり、ガンに冒され、手足がしびれている筈である。ところが、日本の農業は、坪当りの生産性が世界一であり、真冬でも、トマト、キュウリ、イチゴなんでも、季節を問わず美しいものが出回っている。米にしても、農薬の43%を使うだけあって、生産性も高いし、みのりもよい。これは、すべて、近代農業技術の進歩のたまものであり、別に農民が戦前より長時間働いて生まれた結果ではない。
それが、現代の現実である。
ゴルフ場の農薬は、こうした現代化学の恩恵をほんの少し(2%)受けたものであり、しかも注意探さは、最高水準といえよう。
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