改造・設計例Renovation Design examples
本厚木カンツリークラブ
所在地:神奈川県厚木市飯山1700
Phone:046-241-4111
コース:18holes、Par 72
開場日:1962年11月3日
設 計:赤星 四郎 改造設計:倉上 俊治
1962年開場、本厚木CCも半世紀を経たコースの改造が必要との声が上がった。
コース改造に当った倉上俊治氏への依頼は「赤星四郎氏の設計コンセプトを守ること」。
元牧場地の起伏に広がった18ホールは赤星マインドを反映して自然の地形を生かし、会員に愛され誇りであった。
「その意味でのプレッシャーと、やりがいは強く感じた」と語るが、心境は例えて言えば往年の名画の修復に当たる技術者に重ねられる。
本厚木CCからの依頼はコーライグリーンのベント化。工事期間は2007年の2月から5月。その前年の12月にコースの詳細測量を行った。改造のポイントは赤星イズムを尊重しつつ依頼に従った2グリーンだった。
原設計を見ると、例えば15番ホール・パー3はベント、コーライグリーンは完全にセパレートされていた訳ではない。
元来のベントグリーン(ペンクロス。以下Pグリーン)のやや右手前にコーライグリーンが接していた。ティーグランドから見ると色の違いこそあれ一つのグリーンに見えたはず。このようなベント・コーライが接していたホールは、15番のほか、13番(パー4)、18番(パー5)などで、コーライのベント化でははっきりとセパレートすることがテーマとなった。
15番ホールではコーライグリーンを右斜め前方に移設。2つのグリーンの間を広げた。以前には、Pグリーン使用時にコーライグリーンにオンしたボールはグリーン外からのアプローチするルールだったが、そのままパターで打つケースが多かった。完全にセパレートされたことでそれは無くなった。
新グリーンの芝はクリーピングベントグラス・T1に決定した。
本厚木CCの特色としてバンカーの少なさが挙げられる。赤星四郎氏の意図からか18ホールで僅か59ヶ所しかない。倉上氏もその意向を尊重して一切バンカーは増やさなかった。それはあくまで赤星イズムの継承「極端に各ホールの難易度を上げない」ということだった。
バンカーの新設より重要なテーマは赤星マウンドの移設だった。「赤星マウンドは元のコーライグリーンの右手前にあった。コーライグリーンをPグリーンとセパレートし、右斜め前方に移設するとマウンドが消えてしまう。「赤星さんのマインドがそこにある」と感じた倉上氏はTグリーン(新ベントグリーン)後ろの右サイドにマウンドを移設した。このマウンド移設に要する労力、時間を考慮すると何もマウンド一つに、と考えたくもなるが、それが赤星四郎氏の絵の修復をまかされた倉上氏の誇りと責任であった。

GCA JOURNAL No.14(2014年12月発行)より