写真掲載許可 若松ゴルフ倶楽部
未来への道筋Future
次世代に向かっての課題
今後において考えてゆかなければならない留意点とは?
良いコースとしての価値観も個々の価値観やニーズによって変わるものです。またそれは時代の流れによっても変わるものであり、それらに対応したコース造りを心掛けておくことが肝要です。
その時代ごとの流れや経年劣化などの、問題点となるものは以下のようなものが上げられます。
将来的な課題要素として
- 高齢化と少子化社会におけるコースの数と入場者数の減少が懸念されています
- 地球温暖化によるグリーンやコース芝地全体へのダメージの増加傾向があります
- 労働力不足によるコース管理力の低下が懸念されます
- ゴルフ道具進化によるコースの見直しの必要性があります
- 経年劣化による各設備の老朽化が進んできています
- 造成当時森林法に基づき植栽した樹林が大きく成長し芝地への悪影響があります
これらの問題への取り組み方によって、今後のコースの存続に大きく影響してきます。
それらの課題に対する将来的な留意点や対応策として
1.高齢化と少子化社会におけるコース数と入場者数の減少について
日本のゴルフ場は、調査元、調査時期、ゴルフ場数と営業コース数でその数値に多少の差異はあるものの、営業コースでは2004年の2,356コースをピークに減少し続け、2024年9月現在の営業中コースは2,121コースとピーク時の約12%が減少しています。(一季出版資料参照)
各々の持つコースの体質により差異はありますが、今後のコースに求められるものは難易度や、戦略性や美観だけでなく、高齢者や女性客が満足感を覚える雄大で美しいコースへの改善が必要です。
その対策の一つとして、カートのフェアウェイ乗り入れ対策です。これは近年の猛暑の夏を快適にプレイできるよう、また高齢者及び女性にも負担にならない為にフェアウェイへのカートの乗り入れ化は今後のニーズとして注目されます。その為にはそれに耐えられる芝の状態が求められます。留意点として土台となる床土の改善の検討、傾斜の緩和や入り口と出口の有効幅と形状の確保など、コースの整備改修が必要です。


2.地球温暖化によるグリーンやコース芝地全体へのダメージの増加とその対策として
現在日本にあるコースの7~8割は30年~50年前に作られたコースが殆どと言えます。毎年エアレーションを重ねても透水性や保水性の悪化や床土の固結により芝の生育が衰え、グリーンキーパーの近代的な管理手法でも対応困難な状態に陥ってきている状況と感じます。特に最近の異常気象ともいえる地球温暖化は古いタイプのベント種や透水性が悪くなったグリーンの床土の透水性などの状況下においては猛暑に耐え切れず張替を余儀なくされるケースをよく見かけるようになりました。近年では、補修用のベント芝が入手困難になるほど多くのコースでグリーン被害を受けています。


3.労働力不足によるコース管理力の低下について
人口減少により、コース管理の担い手も減り、現在どこのコースでも芝草管理者の確保に苦労しています。これらを解消する手段の一つとして近年導入されている無人ロボットモアは画期的な新技術と言えます。2024年現在自動FWモアは既にコース全体の1割で導入され、効率のよいラフモアや開発研究中のグリーンモアも近い将来多くのコースで採用される事になるでしょう。
ただし、それらの導入はどのようなコースでも無条件にというわけではなく、それらが問題なく稼働できるよう改修することが必要となります。
4.ゴルフ道具進化によるコースの見直しの必要性
ゴルフ道具、すなわちクラブやボールの改良により数十年前よりその性能がはるかに向上した為グリーンのアンジュレーションやバンカーハザードの配置の見直しが迫られています。
現時点においても多くのコースでその対応や対策が進んでいないと感じます。

写真掲載許可 加古川ゴルフ倶楽部撮影 中田 浩人

写真掲載許可 泉ヶ丘カントリークラブ撮影 中田 浩人
5.経年劣化による各設備の老朽化について
散水設備の劣化 芝草管理の上で欠かせない最重要施設は散水設備です。芝地の生育をコントロールするのに最も重要なイリゲーション設備の劣化が近年著しく、それの損傷は近年の温暖化により更に危機感を与えています。特に本管に鋼管を使用していた1985年以前のコースでは管の腐食による漏水、減圧等が発生し、散水に支障をきたしているコースが多くなってきています。
排水管の劣化 日本列島も温暖化により亜熱帯化してきており、線状降水帯や集中豪雨による被害がもたらされています。ゴルフコースにおいては造成当時の設計雨量をはるかに超える短時間雨量により、排水管の排水能力が不足してきていると共に、排水管の劣化による破損などから被害が多くのコースで発生してきています。老朽化による管の破損や目詰まり、周辺の土砂流入による排水機能不全等々、応急処置では対処できないケースも多くのコースで見受けられてきました。

コースバンカーの劣化
バンカーにおいて砂が豪雨などによる周辺からの土砂流入によりバンカーの排水性が極端に落ち込み、降雨後に水が抜けない状況が頻繁に見受けられることが問題となります。
対策として砂の入れ替えが必要となります。砂を洗浄し再使用する方法もあります。また、床土との混ざりが起きないような工夫として、不織布マットなどを採用するコースも見受けられるとともに、様々な工夫を凝らし新しい施工方法が研究されてきています。


経年劣化のカート道路
日本のゴルフコースに1964年に乗用カートが最初に導入されました。
それは主にキャディー不足を補う手段としてでもありましたが、近年のスタイルと同様、日本のセルフプレイの流れの始まりとも言えました。日本のゴルフブームの多くのコースはカート道路を同時に施工し、またそうでないコースも次々とカート道路を備えてきました。
アスファルトの経年劣化により沈下起伏が激しくなり、時には樹木の根が入り込みカートの走行に支障をきたしています。オーバーレイ工法や舗装の打ち直し、ルートの合理的な再設定など舗装工事をしてゆくことで、景観も改善されてゆくものです。



6.開場当時の森林法に基づいた樹林帯のコース芝地への影響に対して
これまではコース全体の美観、戦略性、安全性を維持してきた樹木も、大木になり過ぎたものが以下に記す様々な支障を招いていることを理解しなければなりません。


- グリーンや他の芝地に日陰を作りその生育に支障を及ぼしています。
- 風通しを悪くしグリーンに病害を発生させる要因を作っています。
- 地表面を根が這い芝地の維持管理に障害をもたらしています。
- 時には枝の落下や倒木でプレイヤーにも危険が及ぶこともあります。
- 松枯れや、ナラ枯れ処理費等、当初想定外の管理費用が増加しています。
よって、これらコース内の樹木を見直し伐採や枝抜きなど、適切な処置を取ることはコース側にとって非常に大切な仕事となります。

以上、現在の日本のゴルフコースが抱える改修・改造が必要な問題の事由として考えられます。